ベークライトは、耐熱性や電気絶縁性に優れ、機械的強度が高いことから、電子部品や機械部品など幅広い用途で利用されています。その一方で吸水性が高く、リサイクルが難しいといった弱点もあります。この記事では、ベークライトの特徴や種類、用途に加え、切削加工の際に知っておくべき注意点について詳しく解説します。
ベークライトの加工なら宮崎製作所
宮崎製作所では、長年の経験とノウハウを活かしたベークライトの切削加工をおこなっています。お客様のご要望に沿って、さまざまなベークライト製品の切削加工が可能です。
加工実績サンプル
紙ベークライト
-
用途 端子台
寸法 28×28×182
-
用途 端子台
寸法 30×96×110
-
用途 コイルサポート
寸法 9×50×150
-
用途 コイルサポート
寸法 0×46×147
-
用途 コイル押さえ
寸法 18×20×298
-
用途 ジャックマウント
寸法 15×28×40
-
用途 端子台
寸法 15×20×60
布ベークライト
-
用途 ソケット
寸法 Φ65×35
-
用途 ストッパー
寸法 20×20×46
-
用途 ガイド
寸法 2×56×63
ベークライトとは
ベークライトは、フェノール樹脂を基材としたエンジニアリングプラスチックの一種で、世界で初めて商業化された合成樹脂です。耐熱性や電気絶縁性、機械的強度に優れており、さまざまな工業製品の製造に広く使用されています。硬化後には構造が強固になりますが、再加工はできません。また、脆くて割れやすく、湿気による寸法変化も起こりやすいといった欠点があります。
ベークライトは切削や成形加工がしやすく、部品の形状やサイズに合わせたカスタマイズができることから、特に精密機械や電気機器分野での活用が盛んです。比較的安価に調達できる素材でもあり、コスト効率が求められる製品に適しています。
ベークライトの種類
ベークライトは基材として使用する素材の違いにより、紙ベークライトと布ベークライトの2種類があります。以下、それぞれのベークライトの種類について解説します。
紙ベークライト
紙ベークライトはフェノール樹脂と紙を基材としたベークライトで、軽量かつ加工性が高い点が特長です。電子機器や電気部品の絶縁材として使用されることが多く、プリント基板や配電盤などに活用されています。また、比較的安価に製造できるため、予算に制約がある製品や大量生産を行う分野で多く採用されています。ただし、強度や耐衝撃性は布ベークライトに劣るため、使用環境に合わせて選定することが重要です。
布ベークライト
布ベークライトはフェノール樹脂と布を基材としたベークライトで、紙ベークライトより強度があり、耐衝撃性にも優れています。機械的強度が高いことから、機械部品や金属代替の構造部材として利用されることが多く、特に摩耗や衝撃が加わる部品に適したプラスチック素材です。布ベークライトは紙ベークライトに比べて調達コストがかかるものの、より過酷な使用条件で用いる際には信頼性の高い選択肢となります。
ベークライトの特徴
ベークライトは耐熱性や電気絶縁性、機械的強度に優れ、コストパフォーマンスも高い合成樹脂です。加工性も良好で、切削加工や射出成形など多様な加工方法に対応できるため、幅広い工業用途で使用されています。以下、ベークライトの各特徴について解説します。
価格が安い
ベークライトは他のエンジニアリングプラスチックと比べて価格が安く、コストパフォーマンスに優れています。加工性も高いことから、複雑な形状の部品を低予算で調達可能です。
耐熱性が高い
ベークライトは、150〜180℃の高温にも耐える優れた耐熱性を持っています。熱による劣化が少なく、長期間安定した性能を発揮するため、加熱が必要な工程や高温下での部品に最適です。安全性が求められる機器においても信頼性の高い材料として使用されています。
電気絶縁性に優れる
ベークライトは高い電気絶縁性を持ち、電気機器の絶縁材として非常に適しています。また、周囲の電気的影響を受けにくい点も特長で、精密機器や電子機器の内部構造を保護する役割も果たします。このため、電気機器において欠かせない絶縁材料として幅広く活用されています。
機械的強度が高い
ベークライトは硬度が高く機械的強度に優れた材料であり、外部からの衝撃や摩耗にも耐える性質を持っています。特に、布ベークライトの強度は優秀で、重荷重や繰り返しの衝撃が加わる環境でも優れた耐久性を発揮します。
加工性に優れる
ベークライトは切削加工がしやすく、精密な形状の部品にも使用されています。ただし、硬度は高いため、刃物に負担がかかることに注意が必要です。また、熱硬化性樹脂でありながら射出成形が可能で、大量生産にも対応できます。
ベークライトの弱点
ベークライトは優れた特徴を持つ一方で、いくつかの弱点もあります。ここでは、ベークライトの弱みや欠点について解説します。
リサイクルが難しい
ベークライトは一度硬化してしまうと、再び柔らかくしたり溶解させたりすることができないため、リサイクルには向かない素材です。製品としての寿命を終えたベークライトは、基本的に再加工ができないため廃棄処理となります。ただし、非生分解性(自然に分解されない)であるため、廃棄時には環境への配慮が求められます。ベークライトを採用する際は、その後の処理や廃棄方法についても事前に計画しておくことが重要です。
吸水性が高い
ベークライトは水分を吸収しやすく、本来の性能が発揮できなくなる場合があります。特に寸法の変化や絶縁性の低下が生じる恐れがあるため、湿度が高い環境や水気にさらされる用途には適していません。電子機器や精密機器に使用する際は、製品の保管環境や取り扱いに注意が必要です。
耐候性が低い
ベークライトは紫外線や湿度、温度変化などの環境要因に対する耐性が低く、屋外での長期使用には適していません。特に紫外線に晒されると、表面が劣化して変色や割れが生じることがあります。また、湿気を含んだ環境では吸水して膨張する可能性があり、寸法安定性にも悪影響を及ぼす可能性が高いです。
アルカリ系溶剤に弱い
ベークライトはアルカリ系溶剤に対する耐性が低く、表面が変質したり物理的な強度が低下したりする恐れがあります。アルカリ系溶剤に接触して膨張や表面の脆化が生じてしまうと、使用環境によっては部品の寿命を大幅に短縮させてしまいます。そのため、アルカリ系の薬品が使用される工程や環境下では、適切な防護措置を講じるか別の樹脂素材を検討することが必要です。
ベークライトの用途
ベークライトの主な用途は以下の通りです。
電気機器や電子機器の絶縁部品
ベークライトはその優れた電気絶縁性により、電気機器や電子機器の絶縁部品として広く使用されています。具体的には、プリント配線基板、トランス、コイル、スイッチ、ソケットなどに利用され、安定した電力供給と安全性を支える役割を果たしています。
高温環境下で使用する機械部品
ベークライトは熱に強く、180℃程度までは安定した性能を維持できるため、高温環境下で使用される機器の内部部品に活用されています。特に熱が発生しやすい自動車部品や機械部品としての利用に最適です。
耐久性が求められる工業機械や構造部材
ベークライトの機械的強度の高さを活かし、工業機械や構造部材にも適用されています。特に布ベークライトは高強度で耐衝撃性に優れるため、ギアやベアリング、スタータといった耐久性が求められる用途でも活躍します。
加工性を活かせる設計開発や試作品製作
ベークライトは切削加工や成形加工がしやすく、細かい部品の作成にも対応します。設計開発や試作品製作の段階においても、非常に有用な素材です。
ベークライト切削加工の注意点
ベークライトを切削加工する際には、以下の点に注意しましょう。
切削加工の工夫
ベークライトは硬度が高いため、耐久性のある切削工具を使用することが重要です。工具の摩耗が進むと加工精度に影響が出るため、超硬エンドミルやダイヤモンドコーティング工具といった耐摩耗性の高い工具が適しています。
また、切削中の発熱を抑えるため、エアブローによる冷却対策も必要です。冷却が不十分だと樹脂が軟化し、仕上がりに影響が出る場合があります。
作業環境の最適化
ベークライトの切削時には大量の粉塵が発生するため、作業環境の衛生管理が欠かせません。粉塵は作業者の健康に悪影響を与えるほか、加工機械に付着して故障の原因になることもあります。エアーで飛ばしたり集塵装置を使用したりするなど、しっかりとした防塵対策を講じることが大切です。
保管状態の確認
ベークライトは吸水性が高く、湿気を吸収すると寸法変化や性能低下を引き起こす可能性があります。加工前後の保管には乾燥した環境を選び、製品の劣化を防ぐ措置が必要です。また、紫外線にも弱いため、直射日光が当たらない場所であることも確認しておきましょう。
